監査法人が財務情報のみならずあらゆる情報の信頼担保に関与することで企業価値向上に貢献する流れが見えてきた、という記事です。巷ではサステナビリティ情報への保証が話題になっていますが、この記事ではサステナビリティ情報のみならずデジタル情報すべてに対して監査法人の力で情報の信頼性を付与する動きが描かれています。”あずさ”および”PwCあらた”の動きが引き合いに出されてますが、とても面白い動きだと思います。
監査法人、企業価値担うか – 日本経済新聞 (nikkei.com)
ある精密機器メーカーがこのほど、事業の継続か撤退かを判断する事業ポートフォリオの方針をつくった。特徴は投下資本利益率(ROIC)に温暖化ガスの排出量や炭素価格から算出した潜在コストを織り込んだことだ。実はこの方針策定、あずさ監査法人が支援した。あずさはこうした対応を強めている。7月1日に企業のサステナビリティー経営を支援する300人規模の専門部署を設置した。戦略立案だけでなく実務への落とし込みや情報開示、保証まで幅広く助言する。最近は欧州の新しいサステナ開示への支援要請が週3~4社ほど舞い込む。数値にしにくい情報を見える化することは、成長へ向けて企業と投資家との対話を活発にすることにもつながる。
PwCあらた監査法人は、2030年度までに売上高を現在の倍にする成長戦略を掲げる。けん引役は、企業の財務諸表の誤りや不正の有無を確認するといった従来型の監査業務だけではない。サステナやデジタルトランスフォーメーション(DX)といった分野への企業の対応を支える業務も目立つ。例えば、渋滞の緩和や災害時の避難経路情報などに活用できる「3次元GPS(全地球測位システム)データ」。便利な半面、無防備で情報が操作されるリスクがある。そこで大学発スタートアップが参加する宇宙サービスイノベーションラボ事業協同組合(SSIL)と組み、先端技術を使って信頼性を確保するための共同研究を始めた。話題の空飛ぶ車や生成AI(人工知能)も常に誤動作や誤情報の拡散などのリスクと隣り合わせだ。不安が残る技術は社会インフラになりきれず、企業の創意工夫の余地を狭めかねない。
注目度が高まるサステナ関連については先日、国際的な開示基準で、供給網全体の温暖化ガス排出量を指す「スコープ3」を含めた開示が義務化されることが決まった。ただ、温暖化ガス排出量の集計の誤りは大手企業でも日常茶飯事だ。排ガス不正のような数字操作も今後増えるリスクがある。情報の量が増えても質を担保できなければ投資家は活用しにくい。対応を進める企業側は当然だが、「信頼性付与の面で監査法人が果たす役割は増す」(ニューバーガー・バーマンの岡村慧ポートフォリオ・マネジャー)。「市場の門番」である監査法人の着実な成長は、これまで以上に企業の価値向上に直結する時代になる。