「インパクト会計」とは2019年に米ハーバード・ビジネス・スクールが発表した企業活動が社会や環境にもたらすインパクトを貨幣価値に換算する考え方であり、「インパクト加重会計」とも呼ばれています。「インパクト会計」は従来財務会計の枠外に置かれていましたが、昨今のSDG推進の流れの中で注目されるようになってきました。以下抜粋した表の「ESG会計」は「インパクト会計」と読み替えていただければと思います。

企業の真価映す「インパクト会計」、実用化の難路: 日本経済新聞 (nikkei.com)より抜粋

「「社会的インパクトは3.7兆円」。SOMPOホールディングスの桜田謙悟グループ最高経営責任者(CEO)は、2023年度に始める「介護DX」サービスの価値を試算した。総額は同社の年間純利益(過去5年平均)の24倍に相当する。換算手法はこうだ。SOMPOのサービスは、介護や食事、服薬など分散したデータをシステムで集約しケアを適切にすることで、介護士1人が担当できる介護者を増やせる。サービスの普及が介護事業者の経営効率化による待遇改善原資を生み、介護人材の雇用も拡大する。これらにより長期的に約22万人分の介護の人材不足を解消できるとする。家族の介護による22万人分の離職は、国内総生産(GDP)を総額3.7兆円押し下げる。離職しないですむ分のGDP押し上げ効果を数値化した。」

「利益以外を重視する動きが広がっても、企業は慈善活動団体ではなく、営利の追求が不可欠だ。「業績にどうつながるのか」。エーザイが22年9月に開いたESG説明会で、熱帯病治療薬「DEC錠」の無償提供の価値が年間1600億円のインパクトと説明すると、ある証券アナリストがこう質問した。インパクトが大きくても利益につながらなければ、持続可能性は乏しい。エーザイの前最高財務責任者(CFO)で、今は同社シニアアドバイザーを務める柳良平氏は、国や病院、医師などからの会社に対するブランディングの向上、製造拠点の従業員のモチベーション向上と離職率の低下、市場における資本コストの低下などを説明した。柳氏は「インパクトを奇麗事に終わらせず、長期的な企業価値創造にどうつながるかを丁寧に説明することが必要」と語る。」

エーザイのESG説明会における証券アナリストと柳氏とのやり取りは非常に興味深いです。インパクト会計で算定された結果が企業価値にどのくらい正の効果をもたらすのか客観的かつ定量的に説明することが次のステップとして非常に重要と感じました。2021年のダノンCEO解任はその証左と思います。

仏ダノン、パーパス経営のCEOを解任 | 日経ESG (nikkeibp.co.jp)

なお、インパクト会計は2022年6月のGSGインパクトサミットで同議長のロナルド・コーエン卿は、「国際基準は早ければ2025年に導入されるであろう」 と発言しています。2025年といえばサステナビリティ情報の日本における法定開示への取り込みを決めるタイミングになります。

昨今のサステナビリティ開示動向について – CFOニュースPlus (cfonewsplus.com)