日本の会計事務所の在り方が監査中心からコンサル中心に変わってきた、という記事です。監査法人勤務の方にはなじみの深い内容ですが、この論点に焦点をあてて紙面を割くのは珍しいことかもしれません。

会計ビッグバン四半世紀 市場の番人が目指す「二刀流」 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

デロイトの長川知太郎最高執行責任者(COO)は「(会計ビッグバンの)98年に私が就職したデロイトのコンサル部門は100人だった。それが今や組織として1万人になろうとしている」と話す。「監査はすでに社会インフラになった。(グループ全体の)成長を担うのは非監査だ」とみる。デロイトだけではない。みずほフィナンシャルグループなどを担当するEY新日本監査法人などが集うEYジャパン。直近の決算で、コンサルや税務など非監査部門の収入の割合が初めて5割を超えた。EYは監査で顧客数、報酬ともに日本トップだが、他社に比べてコンサルが弱かった。コンサルを担うEYストラテジー・アンド・コンサルティングの近藤聡社長は「(競合から)EYとコンペしたことがないという声をきいた。忸怩(じくじ)たる思いだった」と振り返る。成長分野を取りこぼしているとの危機感から顧客開拓を急いだ。コンサルの勢いが強まるなか、看板とも言える監査の存在感は低下していくのか。あずさ監査法人などを束ねるKPMGジャパンの山田裕行共同チェアマンは「監査は一丁目一番地だ」と強調する。上場企業の財務諸表の開示が正しいかどうかをチェックする監査は、証券市場の信頼を担保する上では不可欠だ。投資家が安心して企業に投資できなければ、資産運用立国もままならない。そもそも監査は金融商品取引法で厳しい品質管理が問われており、コンサルのように顧客の課題を様々な側面から解決しようとするサービスとは異なり、貪欲に売り上げを追う事業ではない。会計士という国家資格に基づいた監査と、業務の領域が自由なコンサルは「水と油」という声も時に聞かれるほどだ。監査のプライド、意地が透けて見える。

監査とコンサルのあり方を巡ってはEYがそれぞれ事業を分離しようとした経緯がある。一大再編と注目されたが内部対立などもあり破談になった。EYが元のさやに収まったことでビッグ4同士の競争も本格化する。監査の担い手不足の解消やデジタル化、コンサルのサービスの差別化など課題は多い。二刀流にどう磨きをかけるか。真価が問われるのはこれからだ。

二刀流にポジティブな内容ですが、規制当局からは「コンサルばかりやって監査をおろそかにするな」という声が聞こえてきそうです。IESBA等で監査の独立性も厳格化するなか、また20年以上前のように監査と非監査の分離のリスク(チャンス?)もはらんだ状況と思います。

ちなみにデロイト日本は2030年に売上一兆円を目指してます。

デロイトCEO、コンサル軸に売上高1兆円めざす DX商機 – 日本経済新聞 (nikkei.com)