いまサステナビリティ保証人を誰が担えるか議論になっています。現状のサステナビリティ保証(Scope1-3の数値保証等)は財務諸表監査と比べて保証人に求められる要件が少ないため、玉石混交の状況になっています。したがって、今後保証範囲が大幅に拡大するサステナビリティ保証において玉石混交の状況が継続するのか否かは実務を担う方々にとって関心ごととなってきています。そんな中面白い記事を発見しましたので紹介します。
サステナビリティ保証の国際基準、当面は監査法人のみが準拠可能か…? 2023年09月27日 | 大和総研 | 鈴木 利光 (dir.co.jp)
本年6月の当コラムで、サステナビリティ情報に対する第三者による保証(サステナビリティ保証)の国際基準に関する議論を取り上げた(※1)。その後、本年8月、国際監査・保証基準審議会(IAASB)(※2)は、サステナビリティ保証に係る包括的な保証基準(‘ISSA 5000’)の公開草案を公表している(※3)。‘ISSA 5000’の公開草案は、それまでの議論の経過で明らかにされていたとおり、「全て」のサステナビリティ保証業務提供者が適用可能(‘profession agnostic’)な基準である旨謳っている。もっとも、公開草案の内容を見る限り、少なくとも現時点の印象としては、非監査法人系の検証機関が‘ISSA 5000’に準拠することは、極めて難しそうである。というのも、公開草案は、サステナビリティ保証業務提供者に対し、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)(※4)の倫理規則(‘IESBA Code’)や、監査事務所における品質管理に焦点を当てたIAASBの品質管理基準(‘ISQM 1’)、又はこれらと同等の要求水準を有する他の基準等に従うことを求めているためである。‘IESBA Code’や‘ISQM 1’は監査法人を念頭に置いたものであることから、非監査法人系の検証機関にあっては、前記の「これらと同等の要求水準を有する他の基準等」に従うという選択肢を探ることになる。しかし、サステナビリティ保証の包括的な基準である‘ISSA 5000’の公開草案が公表されたばかりの現時点では、何をもって「これらと同等の要求水準を有する他の基準等」とするか否かの判断材料はなく、セルフジャッジに依らざるを得ない。実態として、非監査法人系の検証機関からは、‘IESBA Code’や‘ISQM 1’に相当するような「他の基準等」は見当たらない、という声もある。このような状況にあっては、前記のとおり、非監査法人系の検証機関が「単体で」‘ISSA 5000’に準拠することは、極めて難しそうである。そのため、当面は、監査法人のみが‘ISSA 5000’に準拠することが可能になるのではないかと推測される。ただ、当の監査法人にあっても、サステナビリティ情報の専門家が不足しているという声もあることから、外部、すなわち非監査法人系の検証機関から専門人材を招聘するという対応は不可欠になろう。公開草案へのコメント提出期限は、本年12月1日である。
監査法人のみが準拠可能となった場合、次に出てくる論点は”財務諸表監査人=サステナビリティ保証人”とするか否かという点だと思います。