EUが循環型経済に向けた規制を相次いで導入しています、先行導入している繊維産業を切り口にBCGの内藤Pが解説します。欧州は繊維だけでなく電子機器等規制対象を拡げていく見込みです。日本も循環型経済に向けた議論をスタートしています。

リサイクルは事業者負担 EU循環経済規制、繊維から読む – 日経GX (nikkei.com)

――EUが繊維産業を中心に環境規制を相次いで導入しています。:「2008年の『廃棄物枠組み指令』から、環境規制としての骨格が作られ始めた。15年の『循環経済パッケージ』では、循環型経済への移行を提案。欧州の成長戦略の中核という位置づけで、経済政策としての要素が徐々に強くなっていた。18年には『欧州プラスチック戦略』が発表され、19年にストローやカトラリーなど使い捨てプラスチック製品の禁止が掲げられた」「近年は域内の産業保護という観点が強くなっている。欧州は繊維分野で巨大な消費地だが、製造は中国や東南アジアに偏っている。アフリカなどから移民が欧州に流入する中、域内の繊維産業を保護し、雇用を確保する狙いが大きい。環境規制と産業政策が表裏一体となっているのがEU規制のポイントだ

――7月には「廃棄物枠組み指令の改正案」が発表され、アパレル事業者がリサイクル費用を負担する「拡大生産者責任」が提案されました。:「商品の廃棄にかかる費用、輸送や回収といったリサイクルの準備にかかる費用の負担を事業者に義務付ける。EU域内の製造事業者や輸入事業者、販売業者だけでなく、域内の消費者に商品を直接販売する域外の事業者も対象で、影響は大きい。例えば日本から商品を輸出し、EU域内で販売する事業者も想定している」「単純に規制に従うだけだと、事業者のコスト負担が増え、利益を圧迫する懸念がある。自社で資源循環を前提としたビジネスモデルを構築するのが一つの手だ。欧州では一部の小売企業がデポジット制を導入している。消費者が商品を購入するときに追加で料金を負担するかわりに、ボトルの回収に協力すれば追加分を返金し、使用済み商品を回収に出す動機を作っている。さらに自社で再資源化やリサイクルの機能を持てば、原材料の調達価格を抑えることにもつながる

――EUが公表した戦略や改正案は今後、各国の法規制に適用されていきます。:「フランスは20年に繊維製品の拡大生産者責任を導入している。生産者が売れ残り商品を廃棄することを禁止し、再利用やリサイクルを義務付けている。オランダも今年7月に同様の制度を導入したほか、24年にはスウェーデンで導入する予定だ」「日本国内の制度に影響している。経済産業省は今年、繊維製品の循環システム構築に向けた議論を始めた。EU規制をベースにして25年以降に『日本版』の制度作りが検討されている。EU規制は、繊維のほかに、電子機器をはじめとしたハイテク分野も適用の優先対象となる見込みだ。グローバルで事業を展開する企業にはインパクトが非常に大きい。日本企業は欧州規制を横目でみつつ、実験的に循環型ビジネスに取り組んでおくことが必要になる」