昨年来「新しい資本主義」という言葉が広がっていますが、その背景をコンパクトにまとめた記事ありましたので紹介します。この手の話題は経済的な視点に偏りがちな傾向あるものの、当該記事は生活者の視点で分かりやすくまとめられていると感じました。

(社説)企業と社会 多元的な資本主義への道は:朝日新聞デジタル (asahi.com)より以下抜粋です。

 会社はだれのものか。どのように統治されるべきか。そうした議論は長年、続いてきた。米国では、1960年代ごろまで経営者の優位が続いていたが、70年代ごろから企業買収ブームや機関投資家の台頭で、株主の力が強まる。当時、経済学者のミルトン・フリードマンは「企業は株主の道具」「企業の社会的責任とは利益を増やすこと」と言い切った。株主資本主義の原典ともいえる。日本では、かつて株式持ち合いや労使協調などを通じた「日本型経営」が称揚される時期もあったが、バブル崩壊後に、見直しが叫ばれた。近年政府が進めてきた企業統治改革も「稼ぐ力」の回復を狙いとし、株主による「規律」を強調している。時期を同じくして、多くの企業は株主還元を増やした。財務省の統計では、21年度に日本企業が支払った配当金は、90年代末の7倍にのぼる。一方で、従業員の給与・賞与や設備投資は、90年代半ばからほぼ横ばいだ。利益の分配のバランスが崩れているのは明らかだろう。「株主資本主義」によるゆがみは、やはり問い直す必要がある。岸田政権が掲げた「新しい資本主義」はそのきっかけになるかとも思われた。だが、当初の「所得倍増」が「資産所得倍増」にすり替わるなど、変質が著しい。現時点では期待はずれと言うしかない。