2025年度から財務上の特約(コベナンツ)について金融庁が開示を義務化する、という記事です。昨今の経営破綻で銀行のコベナンツによる融資回収で社債権者が割をくっている実情を踏まえた開示の充実になります。大手監査法人が監査している会社では、監査人が指導機能を発揮して注記している会社が大半と思われます。
財務特約の開示義務化 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
コベナンツは企業が融資などで資金調達する際に貸し手の銀行が不利とならないよう、企業の行動に制限をかける契約だ。主に融資に付いており、条件に抵触すると銀行は企業に資金の一括返済を求めることができる。純資産や利益を一定水準に維持することを条件とする場合が多い。金融庁は25年度から企業に対し、融資や社債のコベナンツについて、内容や銀行名、金額、償還期限などの開示を義務づける。該当する融資・社債が連結純資産の3%以上なら臨時報告書で、10%以上なら有価証券報告書で開示を求める。
4月の不動産会社ユニゾホールディングス(HD)の経営破綻では、民事再生法の適用申請時点で普通社債の発行残高が600億円超あった。社債投資家はユニゾHDの経営方針や銀行の融資姿勢が想定できず、無担保でも身動きが取りにくかった。「融資のコベナンツが開示されていれば社債投資家が損切りを素早く判断できた」との声が聞かれる。株式の投資家にとっても、得られる情報が増えることで適切な投資判断につながるとの見方がある。水越恭平弁護士は「企業が抱える潜在的なリスクが分かり、早めに対処できるようになる」と指摘する。筑波大学の中村亮介准教授はコベナンツが開示されることで「今後は銀行と企業との間で緊張感が生まれる可能性がある」と話す。課題はコベナンツの開示がどれだけ充実するかだ。今回、担保提供の制限や他社への投融資の制限、事業内容の限定といった条件については開示を義務づけられなかった。投資家からは開示の一段の充実を求める声が出る可能性がある。