2月1日に東京証券取引所が投資者の視点を踏まえた『資本コストや株価を意識した経営』のポイントと事例」を公表しました。先日筆者も寄稿しています。経営財務がコンパクトに内容まとめていますので、改めてご紹介させて下さい。
東証 「資本コストや株価を意識した経営」のポイントと事例示す|3641号|2024年02月12日|経営財務DB (zeiken.co.jp)
資本コストを複数のパラメータで分析
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて求められる対応の流れは、①現状分析・評価、②取組みの検討・開示、③株主・投資者との対話。毎年(年1回以上)、進捗状況に関する分析を行い、開示をアップデートする。このうち①現状分析・評価に係るポイントとしては、「投資者の視点から資本コストを捉える」、「バランスシートが効率的な状態となっているか点検する」こと等が挙げられた。具体的には、「自社で認識している資本コスト水準と算出に用いたモデル・パラメータを開示」、「複数のモデル・パラメータで分析」等の取組みが期待される。取組み例としては、「株主資本コストについて、CAPM(資本資産価格モデル)に加えて株式益利回り(1株当たり利益を株価で割った指標)に基づく算出も行うとともに、各種指標についてもヒストリカルの推移について、その変動要因とあわせて提示」したコンコルディア・フィナンシャルグループ(東プ、銀行業)の事例等が紹介されている。
将来目指すバランスシートの姿を検討
他方、②取組みの検討・開示に関するポイントとしては、「経営資源の適切な配分を意識した抜本的な取組みを行う」、「資本コストを低減させるという意識を持つ」こと等が挙げられた。具体的には、バランスシート点検を行ったうえで、将来目指すバランスシートを検討して計画を策定することや、将来のキャッシュフローも含め、資本を成長投資や株主還元にどう配分していくのか、キャッシュアロケーション方針を策定すること等が考えられる。取組み例として、「バランスシート改革によって保有資産を圧縮することでキャッシュを創出し、成長投資や株主還元や積極的に資金を注入」したアイシン(東プ、輸送用機器)の事例等が挙げられた。
株主・投資者の属性に応じた対話を
また、③株主・投資者との対話に関するポイントとしては、「経営陣・取締役会が主体的かつ積極的に関与する」、「株主・投資者の属性に応じたアプローチを行う」等が挙げられている。具体的には、IR・SR活動を成長ドライバーとして捉え、リソースを適切に配分するとともに、経営陣が投資者との対話に積極的に参加すること等が考えられる。取組み例として、三陽商会(東プ、繊維製品)では、PBR改善策として、収益性向上に向けた施策と併せて、IR・SR活動の基盤整備や市場との対話を推進している。