各社大詰めに入ってきていると思われるサステナ開示の件、開示担当者の参考になる材料を集めました。

人材版伊藤レポート2.0

開示案を考える前に貴社の人材戦略を整理していただくことを強くお勧めします。筆者の考えでは、「経営戦略と人材戦略を連動させるための取り組み」が十分ではないまま、伊藤レポートで推奨されている取り組みのいくつかをとりあえず着手している会社が相当数存在する印象です。その結果、「よくある指標が並んでるけど、この会社何のためにこの指標目指してるんだっけ…?(=小手先の開示してる会社に投資したいと思わない)」という開示が、2023年3月期有価証券報告書で量産される気がします。

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特に重要な「経営戦略と人材戦略の連動」について推奨される取り組みとして①CHROの設置②全社的経営課題の抽出③KPIの設定、背景・理由の説明④人事と事業の両部門の役割分担の検証、人事部門のケイパビリティ向上⑤サクセッションプランの具体的プログラム化⑥指名委員会委員長への社外取締役の登用⑦役員報酬への人材に関するKPIの反映、が紹介されています。

2022年12月期のリンクアンドモチベーションの開示は、粗削りなところもありますが戦略の記載は独自性があふれており、人的資本を充実させて企業価値を高めようとする志を感じます。この会社は人材コンサルが本業のようで、この開示を通じて営業につなげる商魂も感じます…。

人的資本開示化指針

くどいですが一番大事なのは経営戦略と人材戦略が連動しているかをまず確認ください。そのあと開示を考えます。指針で私が大事だな、と思った箇所を抜粋します。

  • できるところから開示する。最初から完璧は求めない。人材戦略の構築/人的資本への投資→人的資本の可視化→投資家当からのフィードバックのサイクルを廻す過程で開示を徐々に磨き上げるスタンスで臨む。
  • TCFDモデルに沿った開示が投資家にとってもなじみがあるのでお勧め。
  • 具体的な開示事項は比較可能性(どの会社でも共通して開示する指標)と独自性(自社しか開示しなさそうな指標)がある。
  • 調査結果によると投資家は「重要なリスクと機械の特定」、「KPIの設定」、「長期(10年~)業績への影響・関連性」について改善を求めている。

2022年12月期花王開示

大手企業がリスクをとって先行開示しました。比較可能性/独自性の両面で隙のない開示です。ここまで開示できる会社はかなり少数と思いますが、目指すべきゴールの一つとしてぜひご覧ください。サステナ全般/気候変動/人的資本をTCFD4要素の枠組みでそれぞれ説明しています。欲を言えば、ESG活動で社会に与える良い影響だけでなく、花王の財務諸表に与える影響+時価総額に与える影響ももっと知りたくなりました。花王ならすでに影響額は算定済で、敢えて開示してないだけかもしれませんが…。