ISSB副議長がIFRS S1(気候変動)で求めているスコープ3について、「推定値の活用を認める」とコメントしました。実務上の負荷が高いと評判のスコープ3についてISSB側が歩み寄りを示しております。
供給網での温暖化ガス排出量、推定値容認 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
ISSBは国際会計基準(IFRS)を開発する国際会計基準審議会(IASB)の姉妹組織。6月下旬、サステナビリティーの国際開示基準の最終版を公表した。重要なサステナ情報全般(S1)と気候変動(S2)で開示を求めた。スコープ3も対象とした。狙いは投資情報の量や質の向上だ。例えば、異常気象が頻発すれば調達や製造、販売面に影響が出る。温暖化ガス排出規制の強化や環境負荷の大きい製品の不買運動なども起こりうる。こうしたリスク、対応策などの情報があれば「投資家はどの企業に資本を投じるのが最適かを理解できる」(ロイド氏)。一方、企業からはスコープ3の開示は難しいとの声もあがる。取引先は多岐にわたり、多くの企業で情報収集や開示を徹底できる体制が確立されていない。このため、ISSBは基準適用の初年度についてはスコープ3の開示を免除する。2年目以降は「推定値の活用を認める。どのような仮定を置いたのかも明示してもらう」(ロイド氏)ことも決めている。「大企業にはより多くの開示を期待するが、中小企業にはそこまで求めない」とも語った。
ISSB基準は2024年から適用可能で、各国が取り込んで初めて企業に開示義務が生じる。英国やナイジェリア、ガーナ、シンガポールなどが適用する方向で検討している。日本もこれをベースに国内の開示基準を策定する。ISSB基準は、企業の気候変動への取り組みや影響に関する財務情報の開示のための枠組みである気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言が土台にある。ロイド氏は、TCFD開示が世界の中でも進んでいる日本について、「ISSB基準を適用しやすい位置にいる」との見解を示した。