JSUSとは一般社団法人サステナビリティ情報審査協会の略称です。

The Japanese Association of Assurance Organizations for Sustainability Information – j-sus ページ! (jsus.org)

一般社団法人サステナビリティ情報審査協会(以下、当協会)は、当協会認定の審査機関が審査を行い、信頼性に関する一定の基準を満たしていると判断したサステナビリティ報告書等を作成した企業等の経営者に対して、当協会が定めたマーク(審査・登録マーク)の使用を認めるサステナビリティ報告書等審査・登録制度を運営しています(当協会及び審査・登録制度に関するパンフレット(PDFファイル)はこちらへ)。

こちらのサイトに上智大学の上妻教授が執筆されたコラムが載ってました。非常にしっかりした内容で信頼性があります。CSRDとは何か?を理解するにあたり非常に良質な内容でしたので紹介させてください。

39 – j-sus ページ! (jsus.org)

まずはどのような日系子会社が対象となるか、です。大企業が対象になりますが、数値基準見る限り、かなりの子会社が対象になりそうです…。

まずは、日本企業が子会社としてEUに現地法人(EU子会社)を有し、当該EU子会社がCSRD適用会社に該当する場合であるCSRD適用会社は、すべての大規模会社(上場・非上場を問わない)と中小規模上場会社であり、零細規模会社と非上場の中小規模会社は適用範囲から除外されている。これらの会社を判別する規模基準は下表の通りである。会社の法的組織形態は条件に含まれていない。非公開会社でも、規模基準に該当すれば、CSRDの適用会社となる。

 規模基準は大規模から零細規模までの4段階に分けられており、資産総額、純売上高、年間の平均従業員数の3基準から構成されている。それらのうち2基準以上に該当する場合は当該規模の会社として認定される。たとえば、ある会社の資産総額が2000万€超で、平均従業員数が250人超であれば、その会社は大規模会社である。大規模会社は、上場・非上場に関係なくCSRD適用会社となるので、EU子会社が大規模会社に該当する場合はサステナビリティ報告の登記が義務付けられる。現在の為替レートで換算すれば、資産総額2000万€は約29億円8であり、EU域内に生産子会社を保有するような場合では、大規模会社に該当する可能性が高い。EU子会社は、独自に子会社を有するか否かによって、CSRDの規制内容が異なる。自らの子会社を持たないケースでは単体のサステナビリティ報告を登記するだけで足りるが、自らも子会社を持って独自の企業集団を支配するケース(中間親会社)では、自社単体のサステナビリティ報告以外に、中間親会社として自社の企業集団についても連結サステナビリティ報告を登記する義務がある。

次は免除規定です、現時点では実質利用不可能です…。

EU会計指令(2013/34/EU)では、同指令適用会社に対して、財務諸表(単体・連結)とマネジメントレポート(単体・連結)の登記を義務付けており、サステナビリティ報告やコーポレートガバナンス報告書はマネジメントレポート中に開示する。ただし、同指令適用会社(A社)が他の会社(B社)の子会社であり、A社がB社の連結財務諸表・連結マネジメントレポートで連結され、かつ、B社(親会社)もEU会計指令適用会社として連結財務諸表・連結マネジメントレポートを登記する場合は、A社(子会社)は自社の財務諸表(単体・連結)・マネジメントレポート(単体・連結)の登記が免除される。日本企業のEU子会社が同指令適用会社である場合は、この免除規定は基本的に適用されない。EU子会社が親会社の連結対象でも、親会社である日本企業がEU市場への上場等でEU会計指令の適用を受けない限り、免除規定の適用要件を充足しないからである。しかし、サステナビリティ報告の場合は、マネジメントレポートの一部であるにも関わらず、財務諸表・マネジメントレポートの免除規定とは独立して免除規定が適用できるように制度設計されている。日本企業のEU子会社が、親会社の連結サステナビリティ報告で連結されている場合には、一定の条件下で、サステナビリティ報告の登記が免除されるのである。つまり、日本企業のEU子会社が、EU会計指令の適用会社であり、財務諸表・マネジメントレポートの登記が免除されない場合でも、サステナビリティ報告は登記義務の免除対象になる場合がある。ただし、EU子会社が大規模上場会社である場合は、サステナビリティ報告の免除規定を適用できない。日本企業のEU子会社が、サステナビリティ報告の登記を免除されるためには、次の条件をすべて充足する必要がある。

  EU子会社が親会社(日本企業)の連結サステナビリティ報告で連結されている
 親会社(日本企業)の連結サステナビリティ報告がESRS(または同等のサステナビリティ報告基準9)準拠で作成されている
 EU子会社のマネジメントレポートに次の情報を開示する ・親会社(日本企業)の社名・本店所在地 ・親会社(日本企業)の連結サステナビリティ報告・保証報告書へのWebリンク ・EU子会社がサステナビリティ報告(単体・連結)の登記義務を免除されている旨
 親会社(日本企業)の連結サステナビリティ報告・保証報告書をEU子会社の所在するEU加盟国の所管機関に登記する
 ④で登記する保証報告書の保証付与人(監査法人等を含む)は日本の国内法でサステナビリティ報告の保証業務が認可された者である
 タクソノミー規則((EU)2020/852)8条に従ってEU子会社が開示すべき、当該EU子会社10の持続可能な経済活動に関する情報11が、EU子会社のマネジメントレポートまたは親会社(日本企業)の連結サステナビリティ報告に開示されている

これらの免除条件は、日本企業にとって、適用のハードルがきわめて高い親会社である日本企業の連結サステナビリティ報告をEU基準(ESRS)または同等性を承認された基準で作成しなければならず、さらに、連結サステナビリティ報告には日本の国内法で認可された保証付与人による保証報告書を添付しなければならないからである。ESG情報のほぼ全領域をカバーするESRSは、総則(IFRS S1)と気候基準(IFRS S2)のドラフトしかできていないISSBのサステナビリティ報告基準(IFRS SX)と比べても、内容的にきわめて広範囲かつ詳細であり、高品質な報告基準に仕上がっている。そのため、ISSBは、当面の措置として、IFRS SXが未策定であるESG情報領域については、条件付きでESRSの適用を認めている12ほどである13。IFRS SXが完成しておらず、SSBJによる国内基準化も進んでいない現状では、サステナビリティ報告の免除規定適用を受けるEU子会社の親会社(日本企業)は、当分の間ESRS準拠で連結サステナビリティ報告を作成しなければならない。しかし、これは一部の先進的な日本企業には対応できても、その他の大多数にとってきわめて困難な作業であろう。もう一つの難点は保証報告書である。日本の公認会計士であっても、日本にはサステナビリティ報告の保証付与人に関する資格制度が存在せず、CSRDが規定する保証付与人の資格要件を満たせない。EUでは、CSRDで監査指令(2006/43/EC)を改正し、法定監査人の資格要件にサステナビリティ報告の保証業務を付記して、保証付与人となるための教育内容や試験制度を改正した14。これに対応するためには、日本も公認会計士制度にサステナビリティ報告の保証業務を加える必要があるだろう。こうして見てくると、日本企業のEU子会社がサステナビリティ報告の免除規定を適用するのは相当困難であることがわかる。免除規定の適用を受けず、EU子会社が自社のサステナビリティ報告を作成・登記する方が相対的に容易である。しかし、そうした結果、EU子会社のサステナビリティ報告はグローバル水準になるけれど、親会社(日本企業)の連結サステナビリティ報告は品質面で到底及ばず、企業情報の透明性に関して誠実性・一貫性がない経営姿勢であると批判される可能性がある。

続きは次回紹介します。