前回の続きです。
日本企業の連結サステナビリティ報告書も登記・公開を義務付けられます。ここ、会社の実務に大変なインパクトあります。
CSRDでは、EU市場で一定規模の活動を行うEU域外企業(日本企業を含む)に対して、2028年1月1日以降に開始する会計年度から、連結サステナビリティ報告書・保証報告書の登記・公開15を義務付ける規定(40a条義務規定16)を新設した。EU域外企業が企業集団を構成しない場合は単体のサステナビリティ報告書を登記・公開する。40a条義務規定の設置目的は、EU域外企業の事業活動が環境・社会に与える影響を開示させると共に17、EU市場で活動する欧州企業と同等の開示負担を負わせるることで、EU市場での公正な競争条件を確保することにある18。40a条義務規定の適用を受けるのは、EUに子会社または支店を有し、EU市場における直近2年度の連結純売上高がいずれも1.5億€(約216億円)を超過するEU域外企業である。ただし、当該企業の連結サステナビリティ報告書を登記・公開する義務は、そのEU子会社またはEU支店にある。登記・公開の義務を負うEU子会社とは、CSRD適用会社である大規模会社または中小規模上場会社であり、CSRD適用会社であるEU子会社が存在しない場合には、前年の純売上高が4000万€超のEU支店が、この規定の登記・公開義務者となる。つまり、日本企業のEU連結純売上高が2年連続で1.5億€超であっても、CSRD適用会社となるEU子会社が存在せず、また、純売上高4000万€超のEU支店が存在しなければ、この規定の適用を受けないで済む。しかし、40a条義務規定が適用されるケースでは、EU子会社は自社のサステナビリティ報告(連結・単体)を登記するだけでなく、親会社である日本企業の連結サステナビリティ報告書も登記・公開しなければならない。
最後は以下の文章で締めてます。域内適用は2年後、域外適用は5年後。巻き込まれる会社でプライム下位/スタンダード/グロースは絶句するインパクトだと思います。2024年にEU域内上場会社が先陣きって適用するので、これらを横目に見つつ準備を進めていくことになるかと思います。
CSRDは日本企業とって外国法であるが、EU市場で一定のプレゼンスを有する場合、日本企業にも開示負担が及ぶ。CSRD適用となるEU子会社やEU支店から泣きつかれても、日本ではCSRDに関する情報があまりにも少ないので、親会社は対応に苦慮するかもしれない。2023年後半に制定予定のEU・CSDDD(大半の企業に人権・環境デューディリジエンスを義務付ける「企業サステナビリティDD指令」)と共に、EU市場で活動する日本企業は、それらへの対応を十分に練っておく必要がある。