失敗を恐れず挑戦を重ねるサイクルを積み重ねることこそが創造性と価値を生む、という記事です。丸井グループのCWO(Chief Well-being Officer)であり産業医でもある小島氏の寄稿です。
「打席数」をKPIに | 日経ESG (nikkeibp.co.jp)
特に下記は考えさせられました。
どうやって創造性を高め、価値を生むのか。『失敗の科学』の著者マシュー・サイド氏は、同著で次の実験を紹介しています。陶芸クラスの初日、生徒は2組に分けられ、一方は作品を「量」で評価し、もう一方は「質」で評価すると告げられました。量のグループは、最終日に全作品を提出し、使用した粘土の総重量が一定水準より多いか少ないかで評価されます。質のグループは、最終日に自分で最高だと思う作品を1つ提出します。結果、興味深い事実が明らかになりました。全作品中、最も「質」の高い作品を出したのは、「量」を求めたグループだったのです。量のグループは、次から次へと作品を作って試行錯誤を重ね、粘土の扱いがうまくなっていきました。対して質のグループは、最初から完璧な作品を作ろうとして、考えることに時間をかけ過ぎました。「後に残ったのは、壮大な理論と粘土の塊だけだった」と実験者は述べています。
上記を踏まえ丸井グループは失敗を恐れず挑戦する文化を構築すべくKPIに打席数を加えています。
挑戦のプロセスで注意したい点が2つあります。1つは「マウントステューピッド(優越の錯覚)」です。新たな領域で一段階進み、全くの素人からアマチュアになった時に陥りやすいマインドを、組織心理学者のアダム・グラント氏はこう名付けています。少ない知識を基に意見を述べたり、判断したりしていると、分かった気になってしまい試行錯誤から得る学びの感度が鈍くなるのです。もう1つは、「コンセプチュアルディスカッション(本質的な議論)」です。大きな目的はあっても、個々の施策がそこにつながっていない場合があります。例えば「社員の主体性向上」を目的に掲げながら、指示命令型のまま取り組むケースが挙げられます。メンバー同士で頻繁に、「本当に目指す目的に向かっているか」「長期的には失敗につながる成功になっていないか」など、本質的な議論をするのが大切です。
結びに、19世紀に活躍した米大統領セオドア・ルーズベルト氏の言葉を紹介します。「決して間違わない人とは、何もしない人のことである」