最近TCFDではなくTNFDなる言葉が拡がっています。ここでTNFDについておさらいします。

TNFDの意味は過去投稿より抜粋します。

企業においても生物多様性を保全するための対応の必要性が認識されつつあるものの、多くの企業や金融機関は意思決定において自然関連リスクと機会を十分に考慮するための情報を把握できていないのが現状です。こうした課題に対処するために設立されたのが、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD=Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)になります。TNFDは、組織が自然関連リスクを報告し行動を起こせるようにするためのリスク管理と、情報開示に関するフレームワークを開発し提供することを使命とするイニシアチブです。なお、TNFDは気候変動に関する開示枠組みであるTCFDと組織的なつながりはないが、TCFDが確立した開示フレームワークを基礎にフレームワークを開発することを想定している。TNFDフレームワークの開発には、オープンイノベーションのアプローチが採用されており、市場参加者との協議を重ねながら進められている。この分野は非常に新しく、まだ内容が確立していないため、幅広い知見を吸い上げながらより良いものを作り上げようという意図がある。2022年3月にベータ版の第1弾(v0.1)が、6月にベータ版の第2弾(v0.2)が公表されており、今後約1年かけてベータ版を改良し、2023年9月に最終的な提言を公表することを目指す

TNFDの基礎知識:最終提言に向けた連載(1)「自然の定義と依存・影響、リスク・機会」 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

TNFDの基礎知識:最終提言に向けた連載(2)「LEAPアプローチ」 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

TNFDの基礎知識:最終提言に向けた連載(3)「情報開示の4つの柱と6つの一般要求事項」 | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング (murc.jp)

Q:自然とは何か?

A:大気、淡水、海および陸。そしてこれらの資産が組み合わさり、企業や人々の生活に対して価値を生み出す状態が環境資産(あるいは自然資本)と呼ばれます。

Q:自然と社会/企業活動との相互作用関係をTNFDではなんと表現していますか?

A:「依存」/「影響」と表現しています。依存とは生態系サービスの恩恵で企業活動が成り立っている状態であり、影響とは企業活動によって自然の状態を変化させる状態です。したがって、TNFDはTCFDとは異なり、ダブルマテリアリティを採用しています。

Q:自然関連のリスクはどのようなものがありますか?

A:物理リスク、移行リスクに加えてシステミックリスクがあります。

「システミックリスク」は、一つの損失が他の損失の連鎖を引き起こすような、より大規模なリスクを指します。リスクが発生した際に、回復が容易でなく、それゆえに評価が難しいという特徴があります。そのため、まずは物理的リスクと移行リスクを正確に捉えることが肝要です。

Q:LEAPアプローチとは?

A:LEAPアプローチは以下のフェーズから構成されています。

(1) L:発見フェーズ

直接のオペレーションや関連するバリューチェーン(上流・下流)等、企業の活動拠点を洗い出し、それぞれの拠点と自然との接点や自然の状態について検討し、検討結果に基づいて、優先地域・セクターを特定していきます。たとえば、飲料水や木材製品を主要事業とする企業にとって、主な生産地において淡水の枯渇・汚染や森林破壊が進んでいる地域が特定された場合、その地域が優先地域となります。

(2) E:診断フェーズ

各優先地域において、企業の活動が「依存」「影響」する環境資産と生態系サービスを特定し、それらの規模と程度について分析します。前述した飲料水や木材製品を主要事業とする企業の例に当てはめると、飲料生産に利用される淡水や木材製品の原料となる森林等、製品の生産やその他の企業活動のために利用された自然資源(インパクト・ドライバー)、自然の状態の変化、生態系サービスの状態・変化について検討します。

(3) A:評価フェーズ

企業の活動にとって何がリスク・機会であるかを特定し、追加のリスク軽減措置やリスク・機会管理措置について検討しつつ、開示すべき重要なリスク・機会について評価します。評価においては、診断フェーズで分析した自然に関する依存・影響やリスク・機会に関連する財務的影響について考慮する必要があります。

(4) P:準備フェーズ

これまでの分析結果を踏まえ、リスク管理、戦略とリソース配分について決定し、今後達成すべき目標と目標の達成度を測るための指標を設定し、開示に向け準備します。ここでの目標(Target)とは、ハイレベルな方向性を定めるゴール(Goal)とは違い、測定でき、かつ達成すべき期間がはっきりした目標のことを指します。

Q:どのように開示するのか?

A:TNFDはTCFDと同様に、4つの柱(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)をベースに開示します。ただし、TNFDはダブルマテリアリティを採用しているため、その点が開示においても異なります。