「SDGsに高いお金を払って本当に企業価値上がるの?」という声は機関投資家だけではなく上場会社役員からも聞こえてくる問いです。非常に難しく本質的な問いですが、これにこたえてくれる記事を見つけました。中小企業のSDGs実践は非常に本質的でこの難しい問いの答えになりうると考えています。
【対談記事】中小企業がSDGsに取り組む意義とは|日本総研 (jri.co.jp)
近年、メディアや政府、自治体からSDGsに関する取り組みが熱心に発信され、消費者や企業による環境問題や社会問題への意識が以前より一層高まっている。中小企業を対象としたSDGsに関する調査(※1)によると、86%の中小企業の経営者や経営幹部がSDGsを認知しており、大企業だけでなく、中小企業においてもSDGsへの認知が拡大している。一方で、SDGsに取り組んでいる中小企業は12%にとどまり、認知度とは対照的に、実際に取り組んでいる企業は極めて少ない。その背景として、「何から取り組めばよいのか分からない」「SDGsに取り組むことによるメリットが分からない」といった課題が同調査においてあげられている。そこで、今回はSDGsに熱心に取り組まれている中小企業の1つであるあさひ製菓株式会社(以下、「あさひ製菓」という。)の代表取締役社長の坪野恒幸さんに「中小企業がSDGsに取り組む意義」についてお話を伺った。あさひ製菓は、山口県柳井市に本社を置く、大正6年創業の老舗の和洋菓子製造販売チェーン店である。同社のSDGs達成への取り組みは、農林水産省のWebサイト「SDGs×食品産業〜持続可能な社会と食品産業発展のために私たちにできること〜」で紹介されている。味の素、キリン、伊藤園など大手企業の取り組みが同ページで目立つ中、地方の中小企業であるあさひ製菓は少し異色の存在だ。
(土屋)それは重要な考えだと思います。CSRという形で商売とは別の位置づけで取り組まれている企業もありますよね。SDGsへの取り組みをボランティア活動のように捉えてしまうと、商売に関係ないことをやる余裕はないと考えてしまうので、SDGsへの取り組みを商売に繋げるというメッセージは重要だと思いました。(坪野)例えば、一部の大企業が植林活動をしていますが、中小企業では取り組むことが難しいです。中小企業と比較して余裕のある大企業だからできるかもしれませんが、中小企業であれば自社のメリットにならないことはやりづらいですよね。(土屋)坪野社長の話は、“三方よし”に近いですね。自社のこと、お客様のこと、地域のことを考えてらっしゃると思います。一方で、具体的なアイデアを考えて実際に行うというのはそれなりのハードルはあると思いますが、何かコツはあるのでしょうか。(坪野)商売の中での問題点があれば、それがチャンスになると思います。食品ロス削減の取り組み(図 4)ですが、賞味期限が迫っているものやカステラの端切れなどの食品ロスになりそうなものを安く販売しています。基本的に定価の半分で売ろうということで、ハーフスイーツという名前にしています。2004年から始めた取り組みで、20年近く続けています。もともと製造過程においてロスが発生しており、従業員の方々が一部を持って帰っていましたが、ほとんどを廃棄していました。もったいないという気持ちが根底にあって、商売になればと思い、ハーフスイーツを始めました。子どものおやつくらいになるので売れるかなと思っていたのですが、周囲の人に相談したら「ブランドイメージが落ちる」という理由で反対されたんですよ。半額で売ってしまうと普通の商品が売れなくなって、ハーフスイーツばかりが売れてしまうのではないかという懸念もありました。しかし、実際に始めてみるとお客様は定価のものをギフト用として購入して、おやつにはハーフスイーツを買ってくれるというように使い分けてくれました。結果的に、食品ロスが激減して、売上だけでなく利益の向上にもつながっているので、今でも続けています。
(土屋)従業員に心構えをしっかり伝えているのですね。一方で消費者に対しては、食品ロス削減など自社が取り組む社会課題の解決に寄与してもらえるように、行動変容を促すような工夫はされていますか。(坪野)食品ロスを減らしたいので協力してほしいと言ってもお客様にはあまり響かないと思います。そうではなく、お客様のメリットになるように、とにかく安く買えますということを訴えるようにしています。賞味期限が短い、形が悪い、不揃いであるといったデメリットはあるけれども、安いですよということをお客様に伝えて買ってもらっています。その結果、お客様の知らないところで食品ロスが削減されているのですよね。あとでお客様は食品ロス削減に貢献できたのだと気づくのかもしれないですが、その意識があろうがなかろうが結果として食品ロスの削減につながれば良いと思います。そのため、お客様が買ってくれるようなPRの仕方をすれば良いと思います。