NIKKEI GXでスコープ3の特集をしています。今回紹介するのはカテゴリー15、投資先の排出量です。
投資1.3万件のスコープ3 日本生命、「炭素強度」でGX – 日経GX (nikkei.com)
投資先の二酸化炭素(CO2)排出量はファイナンスド・エミッションとも呼ばれる。金融機関では排出量の大半を占めることが珍しくなく、ネットゼロの実現に向けて対応が不可欠の分野だ。投資先であれば非上場の中小企業の排出量なども反映されるため、社会全体で脱炭素を進められるかが重要になる。日本生命保険はCO2排出量を2種類に分けて公開している。「資産運用領域」の排出量がカテゴリー15に当たり、最新データである2021年度実績は1538万トンだった。カテゴリー15以外のスコープ3とスコープ1、2は「事業活動領域」との位置づけで、22年度は17万5190トン。年度は異なるが、単純に合計するとカテゴリー15が排出量全体の99%を占めることになる。投資と一口に言っても形態は多岐にわたる。日本生命が現在、カテゴリー15の計算対象にしているのは上場企業の株式、社債、不動産の3種類だ。少額でも投資しているすべての案件を含める。金融向けの炭素会計基準を定めるPCAFのガイドラインにのっとった対応だ。
カテゴリー15を減らすために日本生命が重視するのが投資先との対話だ。すでに70〜80社と実施しており、実施対象は排出量ベースで約8割に上るという。CO2削減のロードマップ策定を求めるほか、事業のあり方についても意見交換をする。21年には議決権行使の基準にESG(環境・社会・企業統治)の観点を加え、22年から状況次第で取締役の選任などに反対できるようにした。投資由来の排出量を手っ取り早く減らすには、排出量が多い企業への投資を引き揚げるダイベストメントという選択肢もある。ただ、それでは「自分の庭をきれいにしているだけで社会全体の脱炭素にはつながらない」とESG投融資推進室の河合浩専門課長は話す。
カテゴリー15には課題もある。例えば鉄鋼や化学といったCO2を大量に排出する産業が脱炭素に向けた投資をする際に、金融機関が投資資金を供給するケースだ。金融機関は持ち分が増えた分だけカテゴリー15の排出量が増えるため、資金提供をためらわせる要因になる。産業全体の脱炭素にマイナスになりかねない。そこで日本生命は「インテンシティ(炭素強度)」も公開している。投資先の総排出量(カテゴリー15)を日本生命の総投資額で割って求めるもので、数字が小さいほど投資の「質」が高いことを意味する。カテゴリー15が一時的に増えても総投資額と同じ割合での増加であればインテンシティは変わらず、中長期で投資先の排出量が減ればインテンシティも低下していく。
やはり金融機関はカテゴリー15が重いのですね…。保証する際も相当の専門性と手間が求められると感じました。