グローバル基準(ISSB)、EU基準(CSRD/ESRS)及び我が国の基準はよく話題になりますが、それ以外の国々の動きについて各社ご苦労されているとおもいます。EYが非常によくまとまった記事をリリースしましたので紹介します。

サステナビリティ情報開示のグローバル動向 2024年2月号 | 会計・監査インサイト | EY Japan

オーストラリアブラジルコロンビア香港日本韓国マレーシアニュージーランドナイジェリアフィリピンシンガポール台湾トルコに続き、バングラデシュ(銀行・金融機関向けのみ)とコスタリカ(スペイン語のみ)が最近、ISSBサステナビリティ開示基準との整合を図る意向を表明しました。カナダと英国もISSBに整合させるかどうかを検討しています。とはいえ、多くの場合、これらの国々がISSB基準にどれだけ忠実に従うかはまだ分かりません。
エマニュエル・ファベールISSB議長は、2024年上半期のISSBの焦点は、ISSB基準との整合を決定した国々を支援すること、他の国・地域と協力して適用に向けたロードマップを作成すること、そしてISSBの2年間の作業計画を確定することであると繰り返し述べました。この2年間の作業計画には、ISSBがモデル開示基準の開発を決定する可能性のある、人的資本や生物多様性といった新たなサステナビリティ・トピックが特定されることが期待されています。

米国では、証券取引委員会(SEC)が、長く待ち望まれる気候関連開示規則を最終化する作業を継続しています。最終規則は、今後数ヶ月以内に発表される可能性があります。最終規則が発表された場合その時点で、おそらく訴訟の対象となり、その導入は遅れるかあるいは軌道修正される可能性があります。
カリフォルニア州では、米国商工会議所を中心とする企業団体連合が、同州が最近制定した気候変動情報開示法に異議を唱える訴訟を起こしました。事業者団体は、同法は「気候変動に関する費用のかかる弁論を企業に強制する」ことで企業の権利を侵害していると主張し、また、この法律は州政府に事実上の国家排出規制機関としての活動を強制するものであり容認できない、と主張しています。カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムの行政府は、この法的異議申し立てについてまだコメントしていません。
さらに、ニューサム州知事が最近発表した予算案では、カリフォルニア州大気資源局(CARB)が新しい気候情報開示法の規定を施行するために必要なルール作りを行うための予算が計上されておらず、これらの法律の施行にまつわる不確実性がさらに高まっています

欧州連合(EU)のサステナビリティ報告に関する法律である欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)が施行され、来年1月にはEU域内の従業員500人以上の社会的影響度の高い事業体(PIE)(基本的には大規模上場企業)から最初の報告書が提出される見通しです。その一方で、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)は、EU加盟国による移管作業が続いており、各EU加盟国は、CSRDを遵守するために必要な国内法、規制、行政規定を制定するために必要な手続きを実施しなければなりません。加盟国の移管期限は2024年7月6日です。フランスは移管を完了した最初の国であり、スペインやオランダをはじめとする数カ国が現在、移管プロセスを開始しています。

2月13日、中国の三大株式市場である上海証券取引所(SSE)、深セン証券取引所(SZSE)及び北京証券取引所(BSE)は、上場企業向けのサステナビリティレポートガイドライン案を公表しました。環境、社会及びガバナンスに関する広範なトピックについて、中国の大企業および重複上場企業に新たな報告義務を課すもので、2025年度のデータに関する最初の報告期限は、2026年4月30日となっています。
気候関連開示については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のフレームワークに準拠した気候関連リスクの開示が要求されます。この報告義務は、ISSB、EUのCSRD及び米国SEC規則案と同じアプローチを反映しています。また、ダブル・マテリアリティの概念を採用しており、企業は、サステナビリティに関連するリスクが自社の事業にどのように影響を与えるか、自社の事業が環境や社会にどのような影響を与えるかを検討する必要があります。
注目すべき違いは、中国の規則では、スコープ3排出量の開示、シナリオ分析及び第三者保証は義務ではなく、推奨である点です。気候や環境以外では、科学技術倫理、サプライチェーンセキュリティ、中小企業の平等な取扱い、データセキュリティと顧客のプライバシー、人的資本指標及び農村部の活性化など中国固有の要素に関する報告義務が示されています。ガイドライン案の意見募集期間は2月29日までです。