政府は2月に初めてGX経済移行債(10年物)を約8,000億円発行しました。GX債は政府が2050年の温暖化ガスの排出実質ゼロを実現するため発行するもので、償還の財源が用意されている(例:排出権割当制度で電力会社などにCO2の排出枠を割り当てて負担金を徴収)ことが特徴です。GX債の今後についてBNPパリバ証券の中空氏がコメントしています。
移行債の成果開示、海外資金の呼び込み左右 中空氏 – 日経GX (nikkei.com)
GX移行債の初めての入札結果をどう評価しますか。
予定通り順調に消化できたと感じる。(応札額を落札額で割った)応札倍率は3倍前後だった。初物は買われやすく、メガバンクや生命保険など長期運用の資金を持つ投資家もいる。政府が出している債券で堂々とESG(環境・社会・企業統治)アセットだと言え、保有の意義もある。実際に投資を表明し、GXを後押ししたいと情報発信する例もあった。
ESGへの貢献を重視する投資家からの需要の強さでグリーニアムもわずかながら出た。移行債の市場はまだ形成途中で、資金使途が限られるため、大きなグリーニアムはつきにくいと考えていた。
今回の資金使途はグリーン債と名乗っても「グリーンウオッシュ(見せかけの環境対応)」と言われない、しっかりした内容だった。日本は温暖化ガスを排出する産業が多く、脱炭素に向けて移行しなければならない。今後の発行では(原子力などグリーンか見解が分かれる)トランジションに近い資金使途も出てくるかもしれない。移行債を嫌がる投資家も一定数いるため、資金使途がきちんとした債券を発行することで門戸を広げた。
海外投資家の動向が注目されていました。
海外投資家からの引き合いは少なかったと思われる。各証券会社が最終的に誰に売ったのかは分からないが、国内投資家が主体的に投資したようだ。今後、投資家向け広報(IR)などで海外投資家のバリエーションが増えることに期待したい。日本の移行債が先鞭をつけ、市場の厚みを増していけるかも課題だ。まだ海外の政府や企業がフォローする動きは見られていない。
10年間で20兆円のGX移行債の発行が予定されています。
20兆円分を発行できる程度には、投資家のGX移行債への理解が得られていると考える。投資のPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルが回せる結果になるかが重要だ。資金の使い方や政府の戦略に注目が集まれば、投資してみたいと思われるのではないか。
市場の魅力を高めるにはモニタリング(監視)と投資家にとって分かりやすいレポーティング(開示)を徹底するしかない。どこに重点的に投資し、その結果どの程度の経済効果に結びついたのかモニタリングする。効果が出ていることが示されれば、他国がまねしたり、移行国債のインデックスなどができたりし、積極的に買いが入る可能性もある。
今回のGX債は約4割を日銀が購入したとのこと。
GX債4割超、日銀が保有 – 日本経済新聞 (nikkei.com)