最近人的資本について各社から問い合わせ受ける機会急増しました。売上高10億前後から1兆円越えの会社まで、1部の経団連銘柄の例外を除いて質問されることはだいたい」一つ、「何しないといけないの?正直よくわからないんだけど…」です。気候変動に関して各社から受ける質問は個別具体的になりつつありますが、人的資本はまだまだこれからという印象を持ちました。そこで皆さまからよく聞かれる質問をQ&A形式で掲載します。私見が加わっている点お含みおきください。

Q:人的資本って何?

A:決まった定義はありません。例えばOECDでは「個人的、社会的、経済的厚生の創出に寄与する知識、技能、能力及び属性で、個々人に備わったもの」と定義してます。ざっくり言うと”経済的収益/非経済的収益を生み出す個人の能力/技能等”ですかね?

「OECD(経済協力開発機構)は人的資本の定義を拡大し、2001年の報告書では人的資本を「個人的、社会的、経済的厚生の創出に寄与する知識、技能、能力及び属性で、個々人に備わったもの」と定義しました。また、人的資本によって生み出される利益について、経済的収益に限らず非経済的収益(健康、幸福感等)に注目したり、人的資本を、個人のレベルだけでなく、個人の集まりとしてのユニットや組織レベルでとらえたりする試みも生まれています。」

人的資本 | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)

Q:なぜ急に盛り上がったの?

A:もともと世界的にはSDGs推進の一環として重視されていましたが、日本で”新しい資本主義”が推進されるようになって動きが加速したイメージです。

世界的な流れ:SDGsの波があります。具体的にはSDGsの17の目標の1つに「働きがいも経済成長も」があり、こちらを推進していくことが求められるようになりました。

日本の流れ:2022年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2022」が閣議決定されました。基本方針の中で「新しい資本主義」を推進するための方策の一つとして「人への投資と分配」が掲げられました。加えて2023年度には人的資本に関して有価証券報告書で一部情報を開示するよう金融庁で検討中です。2023年3月期決算会社は要注意です。

Q:何をすればいいの?

A:煎じ詰めれば下記2点だと思います。

1.人的資本を利用してどう経営するか? → 人材版伊藤レポート見ながら議論されてる会社が多いです。レポートで求められているかなりの領域が手つかずの会社が多い印象ですので、そのような会社はまず”視点①:経営戦略と人材戦略の連動”(リンク先P33)だけに集中して取り組まれることをお勧めします。1点付言させていただくと1を十分に検討せず、2に進む会社様が多い印象です。制度上の開示要請に応える必要あるため致し方ない面あることは承知しているのですが、1が一定程度練られていないと2の検討はあまり意味をなしません。ここは注意が必要と思います。

人材版伊藤レポート:20200930_1.pdf (meti.go.jp)

人材版伊藤レポート Ver2:report2.0.pdf (meti.go.jp)

2.人的資本をどう開示するか? → 人的資本開示化指針が参考になります。7分野19項目あり、指針自体に強制力はありません。しかしながら、人的資本について何を開示すべきかほとんど世の中に存在しない中で、当該指針を軸に日本の開示実務が定まっていく可能性高いです。したがって何が開示項目になっているか知っておく必要あります。

人的資本開示化指針:20220830shiryou1.pdf (cas.go.jp)

Q:人的資本開示に関して先進的な企業はどこなの?

A:旭化成、三井化学、オムロン等の評判が良いと聞きます。

記述情報の開示の好事例集2021:02_2.pdf (fsa.go.jp)