青山学院大学名誉教授 八田氏からの提言です。新しい視点を頂きました、興味深い意見だと思います。15年ほど前のJSOXに関する積極的な提言を皮切りにずっとガバナンス/内部統制の分野の第一線でご活躍されているイメージがあります。

第三者委員会、役割終わった? 識者・実務家はこう見る – 日本経済新聞 (nikkei.com)

企業不祥事の調査手法として定着した第三者委員会。高額な費用や独立性のあり方などが問われている第三者委は社外取締役が少なかった日本独特の実務。ガバナンス(企業統治)改革により社外取が浸透するなか、まだ役目を終えていないのか。識者と実務家に課題や現状を聞いた。

私も参加する『第三者委員会報告書格付け委員会』は2022年11月に三菱電機の品質不正に関する調査委員会の報告書を格付けしたが、評価はB〜Fまで分かれた。理由のひとつは調査委の独立性、中立性に対する意見が割れたことだ。三菱電機が主体となった調査に携わっていた法律事務所が、その後設置された外部調査委員会でも引き続き調査を主導したことへの評価が分かれた。比較的高評価を付けた委員は、独立性について日本弁護士連合会の第三者委に関する指針に沿っていなくても、報告書の内容で評価すべきだとした。しかし、調査主体が第三者性のある委員会だと標榜するならば、当然、形式もそうであるべきだ。報告書は幅広いステークホルダーに対する説明責任を果たすもの。各自が中身をよく読み込んで判断しろではなく、『誰が』調査したのかという基本のところで独立性を担保すべきだ。

第三者委の費用は高額と聞きます。→「それ以前に、実際にいくらかかったのかが開示されている例が少なすぎる。決算短信をみれば、特別損失などに『不適切会計関連費用』などと記載されていることもあるが、詳細は不明のため正確には分からない。委員報酬やデジタルフォレンジック(電子鑑識)費用など、委員会の活動すべてのコストを報告書の公表と同時に適時に開示して透明性を確保すべきだ」

第三者委は今後も必要でしょうか。→「会社が自浄能力を発揮することが肝要だ。第三者委への依存は過渡的なもので、いずれは社外取締役が調査を主導すべきだ。株主から信任を受け、会社の事情にも精通しているからだ。外部の委員会をつくるにしても、社外取を補佐する形が望ましい。そのためには社外取の選任時に適格性を厳しく問うべきだし、人数も増やすべきだ」

一方、弁護士の木目田氏は第三者委員の役割を社外取締役に移管することに否定的なコメントを寄せています。

本来、企業不祥事の調査は社外役員の仕事では。→「日本では第三者委による実務が確立したためか、意外にも社外取や社外監査役による調査委員会は普及していない。不祥事が起きた時から在任する社外役員はモニタリングが十分だったかどうかの調査対象になり得るため、調査を主導しづらい。他方、新任で不祥事に関与していない社外役員は、会社の実情に詳しくないからと腰が引けるのではないか。第三者委は独立性のあり方を整えつつ、さらに適用範囲が広がるだろう