やや古い記事ですが、古くて新しい議論のため掲載しました。費用を貸し付ける形にして、帰国後●年働いたら免除する契約を結ぶのが実務で見られるケースのようです。ただし①帰国後働く期間が長い②留学が業務の性格強い、場合は返還不要となった判例もあります。
退職でもめる社費留学費用 返還義務の分かれ目は – 日本経済新聞 (nikkei.com)
社費留学をした従業員が退職し、費用の負担を巡ってトラブルになる例が注目されている。4月、大成建設の元社員の留学費用を巡る裁判で東京地裁が元社員に費用の支払いを命じた。ただ過去の裁判例では、必ずしも社員側に支払い義務が認められたわけではない。業務と関連性が高い留学では、逆に会社側からの費用請求が無効と判断されることもある。
企業側から労務相談を多く受ける大槻健介弁護士は「留学後すぐに退職しても、企業側が費用を負担すべき場合もある」と指摘する。判断の分かれ目は留学と業務との関連性の高さだ。内容が業務に直結し留学先や専攻も企業側が指定していた場合などは、従業員側が費用を返さなくてもいいとされることがある。
根拠となるのは労働基準法16条だ。従業員の退職に際し、企業は「違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定めている。違約金を盾に退職を妨害するのを防ぐための規定で、退職時の留学費用の返還請求もこうした妨害行為とみなされる可能性がある。
大成建設の場合も、元社員は社外研修制度で海外の大学に留学。復職後5年以内に退職する場合、授業料など留学中に貸与した費用を全額返済するとの誓約書を交わしていたが、復職後約1カ月で自己都合退職したという。ただ、こうした契約があっても、留学に業務性が高かったり返還免除までの期間が長すぎたりすれば、従業員側の支払い義務がないと判断される可能性がある。国家公務員の場合は法律で留学後5年以内に退職した場合費用を国に返還するよう法律で定められている。これより厳しい基準を企業が定めている場合、「『従業員の退職を妨害する意図があった』と労基法16条違反を問われうる」(嶋崎量弁護士)という。
個人的には、社内留学して1年内に退職するという行為はよほどの理由ない限り道義上問題あると感じます。ただ労働基準法がからんでくると、道義上問題あるからといって留学費用を一定程度会社に返還しろ、という話にはなりにくいということも理解できました。