久しぶりに内部統制基準が改訂されました。先日の日本経済新聞での報道を踏まえ大幅な改訂を想定していましたが、想定していたほどの大きな改訂にはなりませんでした。ただし、近いうちに大きな改訂を起こす前振りのような記載もありましたので注意が必要です。

企業の内部統制、24年度から開示強化 – 日本経済新聞 (nikkei.com)

金融庁は2024年度から、上場企業に報告書の提出を義務付けている「内部統制報告制度」に新たな基準を導入する。海外子会社の事業を対象に含めるよう促すほか、形式的になっていた訂正報告にも経緯や理由を記載するよう義務付ける。導入から15年たち、形骸化が目立ってきた制度を改める。内部統制報告制度は08年にカネボウの粉飾決算や西武鉄道の虚偽記載などをきっかけに導入された。提出を義務付けられている上場企業は約4000社。金融商品取引法で財務報告に関する内部統制の評価と監査を義務付け、内部統制報告書として年に一度、国に提出する。金融庁は今春にも内部統制に関する実務上のガイドラインの改正版を公表する。関係する内閣府令も改正する見通し。24年4月1日以降に始まる事業年度から新基準の適用が始まり、企業は早ければ25年6月頃から新基準で報告書の提出が必要になる。新基準では、経営者に粉飾や虚偽報告につながるリスクの高い領域をきちんと選定し、長期間、調査外としてきた海外子会社などをチェックするよう促す。報告対象として例示されている売上高の基準に満たないために10年以上チェックしていない海外子会社から問題が発見されるなど、調査対象外から開示すべき重要な問題が発見された事例は2~3割にのぼる。調味料メーカーの理研ビタミンでは、海外子会社で加工品の架空取引の疑われる問題が発生。組織的に子会社管理していなかったことが要因だった。

「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」の公表について:金融庁 (fsa.go.jp)

改訂の要点を私見を交えてお伝えします。

(今回の改訂)

◎評価対象決定方法が形式から実態重視へ:①重要拠点の決定に際して例示(売上高のおおむね3分の2、売上/売掛金及び棚卸資産の三勘定)を機械的に導入しない②評価対象外プロセスで発見された重要な不備の取り扱い

◎”ITへの対応”の更なる重視

(今後改訂が見込まれる領域)

◎ダイレクトレポーティングの採用

◎サステナビリティ情報にかかる内部統制対応

◎内部統制監査報告書へのKAM導入

◎経営者の責任の明確化等のため課徴金や罰則規定の見直し

◎会社法と金商法との内部統制を統合